掲載論文

研究の積み重ねが、
未来の治療につながる

当院の医師・研究チームによる学術研究・論文発表(研究業績)を紹介するものです。 脂肪由来間葉系幹細胞(AD-MSC / AD-MSCs)に関する基礎的な考察(仮説)や、臨床現場で得られた観察結果を、 国際的な学術誌等で報告し、知見の蓄積に努めています。

掲載論文一覧

2024

自己脂肪由来幹細胞

Skin amyloidosis status 5 years after adipose tissue-derived stem cell transplantation.

(和訳)脂肪由来幹細胞移植後5年の皮膚アミロイドーシスの経過

【概要】 本報告では、脂肪由来幹細胞(ADSC)投与後に皮膚アミロイド沈着の改善がみられた症例について、同一部位を5年後に追跡し、長期経過を検討しました。対象者は、数十年かけて進行してきた皮膚アミロイド沈着の減少に高い満足を示しました。一方で、自然経過など他の要因も考えられるため、本症例のみでADSCの効果と断定することはできません。しかし、投与後も改善が継続したことや、ADSCに異常タンパク質の分解に関わる作用が報告されていることから、両者の関連が示唆されました。また、効果の持続性は、皮膚アミロイドーシスだけでなく、進行性神経変性疾患への応用可能性を考える上でも重要な課題であると考えられます。

アルツハイマー病

Evaluation of neprilysin activity in adipose-derived stem cells from alzheimer's disease patients.

(和訳)アルツハイマー病患者由来の脂肪幹細胞におけるネプリライシン活性の評価

【概要】本研究は、アルツハイマー病(AD)患者から採取した自己脂肪由来幹細胞(ADSC)におけるネプリライシン(NEP)活性を評価し、自家移植治療の可能性を検証したものです。対象はAD患者5名を含む計7名から採取したADSCを用い、アミロイドβを分解する酵素であるネプリライシンの表面マーカー(CD10)陽性率を測定しました。結果、AD患者由来のADSCにおいてもCD10陽性率は99.3〜100.0%と極めて高く維持されており、ネプリライシン活性が十分に保たれていることが確認されました。この知見は、AD患者自身の脂肪組織から採取したADSCが、自家移植によるアミロイドβ分解療法に適用可能であることを示すものであり、拒絶反応や感染リスクを最小化した安全な治療戦略としての有効性が示唆されます。

神経変性疾患

Adipose-derived stem cells’ potential in neurodegenerative therapy: Highlighting reelin activity.

(和訳)リーリン活性に着目した脂肪由来幹細胞の神経変性疾患治療への可能性

【概要】本論文では、神経変性疾患を異常タンパク質の蓄積によって生じる疾患(proteinopathy)と捉え、脂肪由来幹細胞(ADSC)が異常タンパク質の除去に関与する可能性について検討しました。アルツハイマー病患者由来のADSCを用いて、リン酸化タウとの関連が指摘されるreelin活性を評価したところ、5例すべてで陽性が確認されました。これらの結果から、ADSCが異常タンパク質の除去に幅広く関与する可能性が示唆されました。また、ホーミング作用や神経保護作用、抗炎症作用と組み合わせた今後の研究展開についても考察しています。

2023

脂肪由来幹細胞

Repeated intravenous infusion of adipose Tissue-Derived stem cells as a promising treatment for amyotrophic lateral sclerosis.

(和訳)脂肪由来幹細胞の反復静脈内投与によるALS治療の可能性

【概要】 本論文では、ALS(筋萎縮性側索硬化症)に対する脂肪由来幹細胞(ADSC)の静脈投与について、その治療可能性と作用機序を考察しました。神経修復作用やサイトカイン・神経成長因子の分泌、障害部位へのホーミング作用に加え、ALSで蓄積する異常タンパク質TDP-43の分解に関与する可能性のある酵素「caspase-4」に着目しました。ELISA測定の結果、ADSCにcaspase-4活性が存在することが確認されました。また、本仮説の有効性を検証するためには、二重盲検ランダム化比較試験(RCT)が必要であることを示し、今後の臨床研究の発展につながることへの期待を述べています。

2021

自己脂肪由来幹細胞

Repeated intravenous infusion of autologous adipose‐derived stem cells improves cognitive function.

(和訳)自己脂肪由来幹細胞の反復点滴投与による認知機能の改善に関する報告

【概要】 本報告では、自己脂肪由来幹細胞(ADSC)の反復静脈内投与による認知機能への影響を検討しました。
認知機能障害を有する9名を対象に評価を行った結果、MoCAスコアは平均10.3から19.6へ改善し、全例で悪化は認められませんでした。また、アルツハイマー病患者3名に実施したアミロイドPETでは、1例でアミロイド沈着の低下が示唆されました。
作用機序として、投与したADSCがアミロイド分解に関与するCD10(ネプリライシン)を発現していることを確認し、認知機能改善との関連が考察されました。一方で、本研究は対照群を設けた比較試験ではないため、有効性については今後の検証が必要であるとしています。

間葉系幹細胞

Perspectives on Stem Cell-Based Regenerative Medicine with a Particular Emphasis on Mesenchymal Stem Cell Therapy.

(和訳)間葉系幹細胞治療を中心とした再生医療の現状と展望

【概要】 本総説では、再生医療に用いられる幹細胞(iPS細胞、ES細胞、MSC)を概観し、 とくに間葉系幹細胞(MSC)の特性、臨床応用の現状、将来展望を整理しました。 MSCの多系統への分化能に加え、組織修復、抗炎症作用、成長因子の分泌、異常タンパク(アミロイド等)への関与可能性などを論点として取り上げました。 供給源として骨髄・歯髄などを挙げる一方、脂肪由来幹細胞(ADSC)は採取が低侵襲で、 比較的十分な量を培養しやすい点を臨床上の利点として述べました。 また、静脈投与により病変部へ集積しやすい性質(homing)が臨床応用上重要になり得る点にも触れました。 さらに、日本で幹細胞治療を実施する際の制度(再生医療等安全性確保法、特定認定再生医療等委員会の審査、厚労省への計画提出、施設倫理審査など)を概説し、 医療提供体制に関する要件も含めて整理しました。

パーキンソン病

Repeated infusion of autologous adipose tissue‐derived stem cells for Parkinson's disease.

(和訳)パーキンソン病に対する自己脂肪由来幹細胞の反復点滴投与

【概要】 本報告では、パーキンソン病に対して自己脂肪由来幹細胞(ADSC)を反復して点滴投与する方法について、 臨床の場で安全に実施できるかを確認する目的でパイロット研究を行いました。 対象は3名で、約1か月間隔で5〜6回の投与を行いました。 評価は、神経内科医の診察および患者・介護者への聞き取りに加え、 Hoehn & Yahr分類とMDS-UPDRSを用いて行いました。 観察期間(治療開始から最終投与後6か月)を通じて有害事象は認められず、 MDS-UPDRSは3名すべてで改善を認めた旨を報告しました。 少数例であることを踏まえつつ、反復投与の実施可能性と、今後の研究に向けた基礎的知見を提示しました。

筋萎縮性側索硬化症

ALSFRS scores improved after multiple infusions of autologous adipose tissue-derived stem cells in ALS patients.

(和訳)ALS患者における自己脂肪由来幹細胞の複数回投与後のALSFRSスコア変化

【概要】 本報告では、ALS患者に対するADSC点滴投与について、安全性の確認と有効性の探索を目的に検討を行いました。 6名に対して、4.3〜8.7×10^7個のADSCを1〜2か月間隔で3回投与し、 神経内科医を含む複数医師の診察および患者・介護者への聞き取りにより、投与後最大3か月まで追跡しました。 有害事象は認めなかった一方、病勢進行により1名が死亡した旨を記載しました。 ALSFRSの推移は症例ごとに異なり、維持あるいは低下が混在しました。 オープンラベルで対照群を置いていない点を明記し、有効性判断には慎重さが必要であることを述べた上で、 反復静脈投与を安全に行い得る可能性と、一部症例でALSFRSの維持・改善が示唆された点が今後の試験の根拠となり得ることを提示しました。

筋萎縮性側索硬化症

Long-term survival of a patient with amyotrophic lateral sclerosis (ALS) who received autologous adipose-derived mesenchymal stem cells.

(和訳)自己脂肪由来間葉系幹細胞の投与を受けたALS患者の長期生存に関する症例報告

【概要】 本報告では、ALS(筋萎縮性側索硬化症)に対して自己脂肪由来間葉系幹細胞(ADSC)を投与し、 その後の長期経過を追跡した症例を報告しました。 症例は46歳男性で、2009年に下肢筋力低下や嚥下時のむせなどを契機にALSと診断されました。 ALSFRS-Rは当初43で、症状は急速に進行し、食事や会話時の咳込みが問題となりました。 2013年からADSCの静脈投与を開始し、合計6回の投与を行いました。 投与後、本人は会話や食事中の咳込みが減ったと自覚し、嚥下障害・構音障害が目立たない状態で経過した旨を記載しました。 ALSFRS-Rは最大45までの変化を示し、筋電図ではfasciculation potentialsが検出されない時期があったことも併せて報告しました。 単一症例であるため治療との因果関係を確定するものではない点を明記した上で、 安全に投与できる可能性と、さらなる検討の必要性を示しました。

間葉系幹細胞

The mesenchymal stem cells will break down and remove the abnormal proteins that have become insoluble and deposited.

(和訳)間葉系幹細胞による、不溶化・沈着した異常タンパク質の分解および除去

【概要】 本論文では、幹細胞がアミロイドβを分解するネプリライシン活性を持つという議論を起点にしつつ、 それをより一般化した性質へ拡張し、「不溶化して沈着した異常タンパクを可溶化し、除去する」ような活性があるのではないか、という仮説を提示しました。 皮膚アミロイド沈着とアルツハイマー病脳のアミロイドβは同一ではない可能性があることを指摘し、 単純な同一視を避けた上で議論を展開しました。 この性質が確認できれば、皮膚に限らず心・肝・腎などのアミロイドーシスや、 ALS(TDP-43)、パーキンソン病(αシヌクレイン)など、異常タンパク沈着を特徴とする疾患群への理論的示唆になり得ることを述べました。 また、in vitroで不溶性物質が幹細胞により分解されるかを観察する、といった検証方法にも言及しました。

自家MSC

Re: Intravenous infusion of auto serum-expanded autologous mesenchymal stem cells in spinal cord injury patients: 13 case series.

(和訳)コメント:脊髄損傷に対する自家MSC静脈投与(13症例報告)への所見

【概要】 本レターでは、脊髄損傷患者に対する自家MSCの静脈投与(13症例)に関する既報に対して、 学術的観点から補足と論点整理を行いました。 症例集積の読み方や、今後どのような検証が望ましいかといった研究方法上の観点を中心に述べ、 個別治療の効果を断定する内容ではないことを明確にしました。

自己脂肪由来幹細胞

Hypothesis: Intravenous administration of mesenchymal stem cells is effective in the treatment of Alzheimer's disease.

(和訳)間葉系幹細胞の静脈投与はアルツハイマー病治療に有効である可能性

【概要】 本論文では、アルツハイマー病に対して自己脂肪由来幹細胞を静脈投与する治療戦略を仮説として提示しました。 中心となる考え方は、投与した幹細胞が脳内でネプリライシンを分泌し、アミロイド沈着を分解・除去し得るのではないか、という点です。 根拠の一つとして、皮膚アミロイド沈着が幹細胞投与後に消退した症例を挙げ、 その際に投与細胞にネプリライシン活性を確認した旨を記載しました。 さらに、神経再生・修復、成長因子分泌、抗炎症作用、血管新生など、複数の作用機序が同時に関与し得る点も整理しました。 脂肪由来幹細胞は採取が比較的低侵襲で、静脈投与を反復し得るという特徴にも触れつつ、 有効性は今後の検証で確かめられるべきである、という立場でまとめました。

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